2014年5月23日金曜日

今日の茂雄さん(その4)

クレヨン・水彩絵具・墨、753×566cm
山口薫が描いた月を思い出すような静謐で清らかで、けれどどこか寂しげな絵。と書いて、「月」というのは言いえて妙だなと自分で思いました。なぜならこの絵を最初見た時、縦位置なのか横位置なのか、どっちが上でどっちが下かもにわかには分からず、ただ中空に丸がぽっかりとうかんでいるだけの絵なのかと戸惑ったのですから。

しかしそのうち、その丸のまわりに描かれた柵の具合から、これが草むらの人工池が描かれた絵だと分かります。それにしてもこの池のなんと静かで、明るいこと。

画面のほとんどを占める翡翠色をした草。そよそよと風になびいているさままでとらえた木目のような質感は、茂雄さんが意図的につくりこんだものなのか、あるいは紙の具合なのかもよく分からず、絵のモチーフとしてはたったひとつのものしか描いていないにも関わらず分からないことだらけで、目の奥に刻み付けられるふしぎな絵です。

いやむしろ本当にこれは月を描いているのかもしれない。

池の水面からあふれるような月の光と、さやかに吹き渡る風とを描いたまったき「風景」画としてあるのかもしれない。(たけ)